依存症って
「依存症(いぞんしょう、いそんしょう)」とは、「何らかの行動に対するコントロールの喪失」をさす言葉です。たとえばアルコールについては、毎日のように飲酒を繰り返すことによって、次第に飲酒に対するコントロールができなくなり、「今日は飲まないつもりだったのについ飲んでしまった」、「量をひかえて少なめに飲もうと思っていたのに飲み過ぎてしまった」というようなことが起こるようになります。それによって肝障害などで身体をいためたり、二日酔いで欠勤したり、酔っ払ったまま電車にのって終点まで乗り過ごしたりするような問題を繰り返すようなこともあります。
覚せい剤のような薬物についても同様のことが起こります。薬物の作用は強力で、一時的に元気が出て気分がよい状態を作り出します。そうした効果を求めて短期間に「また使いたい」と思ったり「もっとたくさんの量を試してみたい」と感じたりするようになります。
薬物をなぜやめられないの
こうして使用を繰り返すと、コントロール喪失が悪化し、健康面や経済面などの問題が生じながらも、使いやめることが難しくなります。これは脳内の薬物への欲求を調整するメカニズムの問題が生じているもので、実は本人が心から「やめたい」と思ったり、これまでのことを後悔したりしていたとしても、「使用したい」という強い欲望が生じるのです。
つまり薬物依存症によって薬物を使用してしまうことは、本人の自己責任というよりも、依存症という疾患による症状であることになります。風邪をひいた人が咳を繰り返すように、自分自身でも「何とかしたい」「やめたい」と思いながらも、つい繰り返してしまう行動なのです。
薬物依存症からの回復って
そこで治療としては、なにより「薬物使用をやめることが困難なのは依存症という疾患の症状である」というそのことを理解して、どのようにやめるきっかけをつかみ、やめつづけていくか、やめつづける気持ちをどう高め維持していくか、が重要になります。具体的には、生活のうえで薬物使用のきっかけになるような要素を減らし、薬物なしの生活を続けていくためのいい要素を増やしていくことが大切です。つまり、薬物が必要になるような環境や心理状態を変え、薬物をやめ続けるだけのストレスの解消法や新しい生活のスタイルや人間関係を作っていくことが必要です。
東京ダルクでの回復支援は、こうした新しい環境や生活スタイルを提供し、「仲間」としての回復者スタッフや利用者どうしの新たな人間関係の中で、もうこれ以上は薬物使用を必要としないような日々に向けてのサポートを行っていくものです。
依存症の概念
世界的に認められた診断基準にも記載されており、科学的な探求も進められています。たとえば、WHO(ダブリュエイチオー世界保健機構)が、国によって疾患に違いがあるのかを比較するために作成した診断基準(疾病及び関連保健問題の国際統計分類:ICDアイシーディー)にも「依存症候群」として記載があり、APA(エーピーエー米国精神医学会)の診断と統計のためのマニュアルであるDSM(ディーエスエム)にも「物質使用障害」として依存症の概念が記載されています。このように依存症とは国際的にも学術的にも認められたれっきとした疾患です。