家族・パートナー・友人の方 一緒に考えませんか

あなたの身近な人に、薬物使用の問題があったとしたら。
「違法薬物の使用は犯罪です」しばしば提示されるスローガンです。
マスコミも、時に違法薬物の所持や使用について報道しています。

普通の生活を送っていたら、警察に逮捕される、という事態は想定されないでしょう。あなたの身近な人が、もしかして違法薬物を使用しているかもしれない。実際に、違法薬物らしきものを、あなたの身近な人の周りで見つけてしまった。警察に連行されてしまった。

問題になるのは、違法薬物だけとは限りません。処方薬・市販薬・お酒なども、トラブルにつながる飲み方・使い方をしている人がいます。
飲酒運転で、交通事故の加害者になってしまった。勤務先に遅刻欠勤を繰り返し、上司から注意されているようだ。小遣いでは間に合わず、借金してまで使用しているらしい。

もしあなたが家族の立場であれば……
「親の育て方が悪かったのだろうか」「悪い友達に巻き込まれているのではないか」「自分の接し方に問題があるのかも」「仕事や同僚のトラブルで、ストレス過剰な日々が原因かもしれない」「近所や親類に、どう説明すればいいのか」

もしあなたが友人知人の立場であれば……
「普通の友達として、今後も付き合っていいのだろうか」

そして、あなたは考えます。
「一度警察のお世話になったのだから、きっと反省して、もう手を出さないに違いない」「あれだけ懲りたのだから、今後は普通に生活するに違いない」

あなたは期待します。あなたの身近な人が反省して、普通の生活を送るであろうことを。しかし、あなたの身近な人は繰り返します。もしくは、次第に状況は深刻になっていきます。仕事や勉強に取り組めなくなったり、引き籠りの生活になったり、怒りっぽいなど付き合いにくい性格に変わってきたり。もしかしたら、あなたの身近な人は“薬物依存症”という病気かもしれません。

あなたは悩みます。犯罪がらみでは、気軽に相談できないと思います。叱責しても説教しても懇願しても状況が変わらないので、自分のふがいなさを責めるようになります。「誰にも理解されない」とあなたは孤立し、疲弊します。

あなたのやるべきことは、相談に出向くことです。相談先はあります。家族だけで抱えていては、あなたの身近な人はかわりません。あなた自身のつらさもかわりません。
相談先は、保健医療福祉の専門機関です。薬物依存治療の専門病院があります。保健所や精神保健福祉センターなどの行政機関があります。民間の、依存症カウンセリングに取り組んでいるカウンセリングセンターがあります。家族相談を実施している、ダルクなど依存症のリハビリ施設もあります。相談先には守秘義務があります。安心して相談に出向きましょう。

あなたに大事なことは、依存症について勉強することです。相談できる専門家とつながることです。相談できる仲間を作ることです。専門家の他に、薬物依存症から回復した当事者や、あなたと同様に薬物問題に対峙している家族の話から、多くの学びが得られるでしょう。文献やインターネットで勉強することもできます。ただそれだけに留まらず、専門家と直接相談する方が、より早く問題解決につながります。
依存症について知ることで、あなたの身近な人に、毅然と対峙することを学びましょう。「親の育て方が悪かった」等、自分を貶めることをやめましょう。

あなたの身近な人は、治療を提案しても合意しないかもしれません。「自分には問題ない」「いつでも止められるから、ほっといてほしい」と拒否されることもあるでしょう。一度治療につながっても、なかなか問題解決したように感じられないこともあるかもしれません。でも回復は、そのひと自身で取り組むものです。治療が進まないと、自分を責めることはやめましょう。治療につなげるまでが、あなた自身の取り組むことです。

そのためにも自分だけで、問題を抱え込むことをやめましょう。まずはあなたが、相談先につながることから始めましょう。

保健師 Y