サポーターたより

チョロ松の回復(2)

アキモ

(ダルクって例の施設かー、とうとう俺もそこまで来ちまったか、まっ、入院生活も飽きてきたし、暇つぶしに行ってみるか)

久しぶりに整髪し、スーツに袖を通してバリッと伊達男に決めて病室を後にしました。ダルクに向かう中央線で揺られながら考えていたのは「ナメられたらいけない」ということでした。新しい環境に身を置く時、チョロ松は人一倍警戒心が強くなります。これはチョロ松が過去に受けたいじめが原因でした。

チョロ松は小学校から中学校に変わるタイミングで郊外から都会の学校に転校しました。
1クラスしかない郊外の小学校から7クラスもある都会のマンモス校に移って、転校生であるという理由で入学初日から理不尽ないじめの対象になりました。新しい学校への期待が恐怖に瞬変わりし、まもなく学校に行かれなくなりました。朝家を出るふりをして公園で時間を潰したり、自宅に戻って押入れに隠れたりしながら、誰にも相談できない孤独な日々を過ごしました。

2年に上がった時、母親と担任の助力で恐る恐る学校に戻りましたが、そこでは別の友人がいじめにあっていました。正直ホッとしたと同時に、チョロ松は今度いじめる側に回りました。
ついこの間までの弱い自分を押し殺してイジメの輪に加わりました。そうすることでイジメっ子たちの矢印が自分に向かなくなると感じたからです。

強ければ強いほどイジメられない、悪ければ悪いほどカッコいいい、酒タバコシンナー、暴走族と、虚勢を張って生きることがチョロ松の生き延びる術となりました。思えば、15の夏に覚醒剤を初めて打った時、先輩に勧められて「やったことない、初めてです」というのがかっこ悪くて「これが10回目です」と嘘をつきました。

だから、特にダルクのような場所に行く時には“ナメられたらいけないアンテナ”がビンビンに立ってしまいます。30歳を手前に、まだまだ若いチョロ松にとってそれは仕方のないことでした。

掲載日:2023年2月2日