サポーターたより

チョロ松の回復(7)

アキモ

その日は宿直で僕はダルクに泊まりました。翌日は土曜日で午前のミーティングが終わり、午後は何もやることがなく宿直室で昼寝をしていました。

戸を叩く音がして、見るとチョロ松が昨日よりももっとつぶらになった瞳を光らせ立っていました。
「アキモさん、キャッチボールしませんか」
(この期に及んでキャッチボールとは、チョロ松ずいぶん頑張るな)
「ああ、いいよー」

道路でキャッチボールしながら
「調子どお?」
「全然大丈夫っす」
「そうは見えないけど」(そろそろ正直になれよ)
「マジで問題ないっす」
「そうかー」(ちょっと懲らしめたろか)
わざと暴投しました。すると彼は一目散に追っかけていきます。息切らせて戻ってきます。
「めし食ってんのー」
「食ってます」
何とかして本当のことを言わせたい有力な自分が止められなくなりました。今度もはるか頭上に投げました。ゼーゼー言いながら戻ってきます。フラフラし始めました。
「夜ちゃんと寝れてるー」
「ぐっすりです」
ここまでくるとこっちも意地になってきます。根性比べみたいになってきました。次の球もこれでもかというぐらい遠くに暴投しました。必死になって追いかけていきます。しかし、気持ちに体がついていかないようです。なかなか戻ってきません。その場にへたり込んでしまいました。
「おーい。どーしたー」
「もう勘弁してください。やめましょう」
僕と目を合わせることなく、サーと部屋に戻ったきり出てこなくなりました。

その日の夕方、チョロ松は再び事務所に顔を出しました。
「アキモさん、夜のミーティング一緒に行きませんか」
「あーいいよ。行こう行こう」
あくまでも普段と変わらない生活をしている自分を見せつけたかったのでしょうか、チョロ松はまたしても僕に戦いを挑んできました。顔はげっそりしていますが、目は死んでいません。絶対にバレてはならないという目力が、かえって痛々しくもありました。

掲載日:2023年3月9日