チョロ松の回復(4)
しかしダルクに入所したからと、すぐに回復できるわけではなく、チョロ松もクリーンを手にするまでにはいくつかの試練を乗り越えなければなりませんでした。
同じ部屋で暮らすカワカミさんは、禁止されているにもかかわらず毎晩チョロ松を飲みに誘いました。
トップランクの新聞勧誘員だったカワカミさんは、口八丁手八丁、入寮中も時々仕事をしてきては小金を貯めこんでいました。「おごるから焼肉行こうよー」と誘われて断れるほど、チョロ松はまじめに生きてはいません。飲みに行ったりカラオケに行ったりして門限を破ることも常態化してきました。
カワカミさんは公判中保釈の身で入寮していたので、その後実刑が確定すると刑務所へ収監されてしまいました。金ヅルがいなくなりましたが、チョロ松は大人しくなるどころか、今度は別の仲間を誘って飲みに行くようになりました。酔っ払い同士で絡み始め、仲間割れして殴り合いが始まり、顔面を腫らして帰寮することもしばしば、宿直のスタッフをほとほと困らせました。
「どうしたその顔?殴られたの?」
「はい、ヒロアキとヨシアキがケンカになったので止めに入ったらなんか知らないけどポンさんが切れて殴ってきたんすよ」
「酒飲んだの?」
「飲んでません」
他の仲間とも暗黙の了解、一切口を割らないので本当のことがよくわかりません。「正直さ」の欠片もないので、こっちもだんだんと腹が立ってきます。
そんなドタバタの中、コロンゼが解毒入院先の病院から退院してきました。嫌な予感がしましたがこういう時の予感は大体当たります。