コロンゼ登場(2)
それから一年後、僕はダルクのスタッフになり、茨城で行われた全国ダルクスタッフ研修会でコロンゼと再会しました。再会の喜びもつかの間、コロンゼはどこか上の空で、全く研修会に身が入らない様子でした。30分おきに館内放送で「大阪府の〇〇さんよりお電話です」と呼び出され、戻ってくると顔が土気色になっているので少し心配しました。そして、研修中であるにもかかわらず、さっさといなくなってしまったのでいよいよこれは何かあるぞと思いました。「コロンゼは20コ年下の彼女に相当振り回されてる」との噂話も聞こえてきました。東京に帰ると、案の定「コロンゼがスベって(薬を再使用して)比叡山にたてこもっている」と聞いて、やはりあの人はただ者ではないと思いました。
更に一年ぐらいたって彼のことなど忘れかけていたある日、出勤するとコロンゼが事務所に座ってうなだれていました。
「コロンゼさん!久しぶりじゃないすかー、山にこもっていたとか、今日はどうしたんすかー」
「どうもこうもあらへん、見たとおりや」
離脱症状で体のあちこちが操り人形みたいにピクピク動いて、思うように話せず苦しそうでしたが、要約すると、捕まって執行猶予判決で東京拘置所を出所したが、大阪帰って仕事する前に上野の山で一発だけやってから新幹線に乗ろうと思ったところ、すぐに幻覚妄想に取り憑かれ、前から機動隊、後ろから暴力団に挟まれて身動き取れなくなってしまった。公園の電話ボックスから死ぬ思いでアスカ(東京ダルクスタッフ)に電話して助けを求めた。真夜中に叩き起こされたにもかかわらず、すぐ迎えに来てくれたアスカ宅に1泊し、一睡もしないまま本日から東京ダルクに入寮するとのこと。
「大丈夫ですよ。またやり直しましょ。」
「ああーよろしく。嫌ってへんか?」
「嫌ってませんよ」
「ほんまか。ホントは嫌ってるやろ」
ダルクには“今日のスタッフは明日の入寮者”という箴言があります。この時初めて目の当たりにしました。